秋が来れば思い出す
寄稿エッセイ:2006 年 10 月 30 日
雨宮由紀子 (エコカフェサポート会員)
尾瀬といえば、「♪夏が来れば思い出す、はるかな尾瀬〜♪」の歌。
そして湿原を水芭蕉やニッコウキスゲの花々を愛でながら木道を散策する。
そんな私のイメージを今回の「尾瀬ハイキング(?)」は見事に覆した。
2006 年 9 月 30 日の朝、池袋から出発するツアーの小型バスに乗り込んだ。
尾瀬では、自然への配慮のため、交通規制があり大型バスの乗り入れは出来ない。
エコカフェからの参加者8名、他の参加者と(少し頼りなさそうな) 添乗員さんと群馬県水上町に向かう。
一日目は、諏訪峡散策、奈良俣ダム見学の予定。
そう予定では、諏訪峡を小一時間、散策するはずだった。
バスを降りて諏訪峡の入口に立った私たちの目の前には、「通行禁止」の立て看板。
数日前に落石があったために通行止めになってしまっていたのだ。
唖然とするツアー客と慌てる添乗員さんに思わず噴出してしまった。


結局、歩いて行くはずの 「道の駅」 までバスで移動し、その周辺を散歩することになった。
親水公園から川沿いをぶらぶら歩き、5 人までしか乗ってはいけない吊り橋、笹笛橋を渡ったところで、マイナスイオン数値が書かれている立て札を発見。
その数値が高いのか分からないが、「川の水も綺麗だし、緑もあるし、立て札もあるくらいだからマイナスイオンがいっぱいのはず」
と勝手に解釈をし、大きく深呼吸した。
バスの停まっている 「道の駅」 近くの親水公園にも同じ立て札を発見。
駐車場が近いのに、こちらの方が何故かマイナスイオン数値が高かった…。
その後、奈良俣ダムを見学。
奈良俣ダムは、土石を積み上げた国内最大級のロックフィルダムである。
天端からの眺めは最高で、ならまた湖の向こうに尾瀬の山々。明日アタックする至仏山も見ることができた。
抜けるような空 穏やかな湖面 雄大な山々。
思わず 「自然っていいなぁ」 ってしみじみするが、「…あれ?ダムって人工だ!」 って気付いて苦笑…。
なんだか、自然と人工の間にいるように感じた時間だった。
二日目は、尾瀬ヶ原散策の予定。
添乗員さんから渡された地図には、時間内に散策できるコースが蛍光ペンでマークしてあったが、私たちの行き先は尾瀬ヶ原ではなく至仏山なので、蛍光ペンの対象外。
(ごめんね、添乗員さん)
天気は曇りのち雨。
登山口である鳩待峠は、標高約 1,600 メートル。
さすがに寒く、吐く息が白い。
私にとって、本格的登山は3年ぶり。
最後まで行けるか、少し不安がよぎる中、入山した。
初めは霧が濃く、周りを見渡すことができなかったが、時折、霧が晴れ、広がった視界の先に、緑の中に赤く色づいた木々を見ることができた。
少し時期が早いと思っていたが、至仏山では既に紅葉が始まっていた。
足元には紫色の花をつけているエゾリンドウ。
同じく紫色した花があり、「トリカブトだよ。」 と教えられた。そう聞くと、何故か毒々しく見えてくる。

しばらくして、樹林は乾いた岩場へと一転する。
至仏山は、後で私を悩ませた蛇紋岩でできているため、他の山よりも森林限界が低い。
岩場を登りきり、2,228 メートルの山頂へ到着。
登頂した喜びよりも寒さが身を襲った。
霧に覆われて眺望はいまひとつ。
お弁当を食べ終えた頃、少し霧が晴れ、尾瀬ヶ原と燧ケ岳が姿を現した。
尾瀬ヶ原を眼下に 「これが登山の醍醐味!?」 と一端の登山家になったつもりで征服感を味わった。
一度はやってみたかった、山頂で飲むコーヒー。
凍えた身体に最高のご馳走…でも、やはり寒くて早々に下山。
登ってきたルートとは別の 「山の鼻」 を目指して一気に下るコースを行く。
この下山道こそ、至仏山の最大の難所であることを後で知ることになる。
初めは、木道が整備されていて快調に下りていったが、木道がなくなり、代わって蛇紋岩の岩場を下りる。
この蛇紋岩が曲者で、とにかくよく滑る。
特に濡れている岩は要注意で、少しでも気を抜くと滑って転ぶ。(何度、転んだことか…)
途中、膝が笑っていることに気づく。
私にとって、集中力と怖さとの戦いになった。
すぐ下に尾瀬ヶ原が見えているのに、一向にたどり着かない。まるで、蜃気楼のオアシス状態。
メンバーの助けもあって、何とか尾瀬ヶ原に出たときには、心身ともボロボロ…。
美しく染まった草紅葉に元気付けられて、バスの待つ鳩待峠への木道を登った。
下山するまで雨に降られなかったのは、メンバーの日ごろの行いが良いおかげ。
本当に感謝!!
この機会がなければ、きっと至仏山に登ることはなかっただろう。
普段、知ることの出来ない尾瀬の顔を見ることができた一日となった。
筋肉痛が過去になった今、「今度は花の季節に行きたいな」 って思っている私がいる。
これって、山に魅せられたってこと…!?
良い意味で期待を裏切ってくれた尾瀬は、やっぱり 「はるかな尾瀬」 だった。
次はどの山にしようか、楽しみでもある。


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