潜水調査の可能性と限界
寄稿論文:2007 年 6 月 7 日
益田玲爾 (フィールド科学教育研究センター 舞鶴水産実験所)
1. 春夏秋冬潜る

図1 出現魚種数・個体数
(ともに400m
2 あたりで
3 測線の平均と標準誤差)
および水温の季節変化.

図2 代表的な魚種の
個体数の季節変動.
400m
2 あたりの平均と標準誤差.
2002 年 1 月から毎月 2 回,舞鶴市長浜にある水産実験所の前で定例潜水を行っている.通算約 80 魚種が確認されており,400m2 あたりで見られる魚は冬季には5種類,夏季には 15 種類程度と水温と明瞭に対応した変化が認められる.魚類相全体としてみると,毎年安定して季節変化を繰り返しているようだが,魚種ごとに調べると,年による出現個体数の差は顕著である.また,1970 - 72 年に水産実験所前で行われた魚類相調査の結果と比較すると,最近の調査では南方系の魚が多くなっていることがわかる.
2. 朝昼夕夜潜る

図3 音海の潜水観察で確認
された魚類および 甲殻類の
種数 (a) および個体数 (b).
平均±SD.異なるアルファ
ベットはp<0.05で有意差あり.

図4 キジハタの離底距離と移動距離を
早朝・昼間・夕方・深夜で比較した
(松田克洋 2004 年卒業論文より).
2003 年の 10 月,福井県高浜町音海において早朝 (530 - 700),昼間 (1130 - 1300),夕方 (1730 - 1900) および深夜 (2100 - 2230) の異なる時間帯に潜水し魚類相を比較した.魚は種類・数とも昼に多く,夜に少なかった.一方,これらの時間帯にキジハタの活動性について潜水観察すると,早朝と夕方に活発であることがわかる.彼らはなぜ朝夕に活発に動くのだろうか.
3. 温排水で潜る

図5 長浜,音海および瀬崎における
冬季潜水中の海底水温と魚種数.
いずれも 4 回の平均±SD.音海では
水温が高く,魚種数が多いことが
明らかになった.
瀬崎の今後の動向に注目したい.
2004 年以降毎年 1 月下旬から 3 月上旬にかけて,高浜町音海 (高浜原電の温排水あり),舞鶴市瀬崎 (舞鶴火電が 2005 年夏から稼働),および舞鶴市長浜においてそれぞれ 4 回ずつ潜水を行い,魚類相を比較している.音海では他の 2 地点に較べて水温は常時 2℃高く,魚種数は 2 倍以上おり,また同海域において熱帯および亜熱帯の魚が越冬していることが確認された.

図6 着底直後のムラソイ
(2004 年 2 月,舞鶴市瀬崎).

図7 冬の音海で見られる
ソラスズメダイとガンガゼ.
4. 川で潜る
由良川の源流に近い美山町芦生から,中流域の和知・綾部を経て,海水の影響が現れ始める大江町でも潜ってみた.同じ 8 月でも,当然のことながら棲息する魚の種類は,川の上中下流でまったく異なる.網で採集できないような大型の魚に関する調査は,潜水観察が有効だ.もちろん,透明度がある程度良いことが前提条件ではあるが.

図8 カジカ (由良川美山町芦生).

図9 アマゴ (由良川美山町芦生).

図10 カマツカ (由良川美山町知井).

図11 ナマズ (由良川和知町).

図12 マハゼ (由良川大江町:
この辺りが潜って観察できる限界か).
5 魚礁を沈めて潜る
スギ間伐材の魚礁,広葉樹の魚礁および塩化ビニルパイプの魚礁の3種類をそれぞれ3基ずつ,舞鶴水産実験所の前の海に沈め,どんな魚が集まるかを観察している.設置直後から,特にスギの魚礁周辺では魚の種類数と個体数が目立って多い.陸上では虫のつきにくいスギに,なぜ魚が集まるのか.

図13 スギ魚礁の表面をつつくウミタナ

図14 各魚礁に寄りつく魚の種類数の経時変化.
6. クラゲと一緒に潜る
ここ数年,エチゼンクラゲの襲来が新聞の紙面をにぎわしている.このエチゼンクラゲに,しばしばアジの稚魚が寄りついているのをご存じだろうか.アジはなぜクラゲと一緒にいるのか? この疑問を解決するため,「敵から身を隠すために利用している」「餌として利用している」 「回遊の補助として利用している」の3つの仮説をたて,飼育実験と潜水観察による検証を試みている.

図15 エチゼンクラゲの触手をぬって
泳ぐマアジの稚魚.舞鶴市冠島沖にて.

図16 クラゲの傘の中に隠れるマアジ.
飼育実験と潜水観察の結果,マアジがクラゲに寄りつく生態的な理由は,成長に伴って変化するものと考えられた.すなわち,体長 10mm 程度の頃は,まず仲間と群れを形成する上での目印としている.体長 20mm 頃にはクラゲを隠れ家として積極的に利用する.30 - 50mm の頃は,クラゲを餌場とする.マアジの産卵場は東シナ海の南部にあるので,中部日本沿岸の生息域へ海流に乗って移動する際,移動の補助としてもクラゲを利用しているといえる.
7.潜った日の魚料理 小アジの南蛮

図17 舞鶴産小アジの南蛮.
Featuring 舞鶴産トマトとタマネギ,
徳島産スダチ&拙宅産イタリアンパセリ.
酢 120cc,醤油・ミリン各 30cc,砂糖大さじ 1,出し汁 60cc をあわせて煮立て,さまして鷹の爪を入れれば南蛮酢の完成.小アジ (1 パック) は内蔵とエラをとり,塩コショウする.小麦粉と片栗粉を半々にしたものをアジにまぶし,油で揚げる.15cm 以下のアジなら,二度揚げは不要.熱いまま,南蛮酢に放り込む.タマネギのスライス,お好みによりトマトなど入れ,1 日漬け込む.パセリとスダチも飾ってみた.
もっと知りたいあなたへ
- 吾妻博勝2007.『回転寿司「激安ネタ」のカラクリ』宝島社.
- チャールズ・クローバー 2006.『飽食の海』岩波書店.
- 井田徹治2005.『サバがトロより高くなる日』講談社.
- 石川皓章 2002.『釣魚でつくるおいしい料理300選レシピ集』辰巳出版.
- 益田玲爾『若狭湾水中散歩』(舞鶴市民新聞にてまあまあ好評連載中)http://www.maipress.co.jp/
- 益田玲爾2006.『魚の心をさぐる』成山堂.
- エリック・シュローサー 2007.『おいしいハンバーガーのこわい話』草思社.
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