タイ、対 (たい)、ときどき怠 (たい)
寄稿エッセイ:2008 年 9 月 25 日
川合 梓 (株式会社ジェイ・エス・ビー、エコカフェ法人会員)
大きな期待と少しの不安、わずかばかりのお金を手に、私は異国の地・タイに降り立った。
旅行初日、現地の空港へ到着したのは、夜10時。
いきなり余談だが、出国前に友人から聞かされていた
「タイの空港はパクチーの匂いがするらしいよ」という言葉を思い出した。
「パクチーの匂いしないね」と私。
「そうだね」と、とぼける友人。
そういえば、韓国の時は「キムチの匂いがするらしいよ」と言われたっけ… (汗)
そんなこんなで、初めてのタイ旅行スタート!
世界遺産と美しき建造物
タイといえば、数多くの寺院と世界遺産 (文化・自然) があまりにも有名。
私たちもそれらの地を訪れてみた。
バンコクでは、「ワット・ポー」「ワット・プラケオ」「ワット・アルン」へ。
どの建造物も細やかで美しい装飾が施され、
なんとも言えない輝きを放っている。
ところどころに西洋文化が取り入れられ、東洋文化との融合が美しい。
それにしても、タイはゴールドがお好き。
どこを見ても、金、金、ピカピカ。
さぞかし大金を積んだのであろうと思いきや、すべてが本物ではないらしい。
どおりできれいに残っているわけだ。

ワット・プラ・マハタート
1991年に世界文化遺産に登録された、古都アユタヤは、
個人的にとてもスピリチュアルな世界だった。
特に感慨を覚えたのが、仏教寺院の廃墟である「ワット・プラ・マハタート」。
ビルマ軍によって破壊された仏塔、頭だけを切り取られた仏像。
その頭だけを自らの根で取り囲む大樹。
それらが生きてきた時間の長さと歴史の重さ、
そして、自然の強さを感じさせられる場所だった。
タイの国民性!?
外国では、生活習慣や文化の違いに驚くことも多いが、タイではこんなことが。
水上マーケットへ向かうためエンジンボートに乗り、風を切って川を進む。
途中、川岸の家では、ハンモックに揺られておじいちゃんが気持ち良さそうに寝ている。
ベランダに目を移せば、おばあちゃんがお昼寝。
そんなのどかな光景は、せわしない日常を忘れさせてくれた。
しかし、マーケットに辿り着くと、仕事中であろう船頭さんがボートで寝転がっている。
「ちゃんと働けぃ!」
日常を忘れたのも束の間、そんな自由な仕事ぶりにツッコミたくなる私。
やっぱり私は日本人。
それにしても、タイの人は本当によく寝る。
暑いからなのか、やる気がないからなのかどうかは知らないが、
街中でも寝ている人があちらこちらに。
そんな光景も見慣れてきた私たちだったが、のちに衝撃を受ける。
バンコク最古であり最大の寺院「ワット・ポー」へ訪れた時のこと。
案内された大きな建物に入ってみると…
なんと、巨大な金色の仏像までが横になっているではないか!
いわゆる涅槃仏 (ねはんぶつ) である。
衝撃を受けていた私たちに極めつけの一発。
「ワット・ヤイ・チャイ・モンコン」にて、何やら人だかりが出来ている。
やじ馬根性丸出しの私が人だかりに近づいてみると…
は!猫が仰向けで寝ている!!
見事な仰向けで微動だにしないその姿を、ひたすら写真におさめる人、人、人。
いやはや、タイの国民 (仏・猫) 性、恐るべし。
動物との関わり
アユタヤでは、一番楽しみにしていたゾウ乗りを体験することが出来た。
高台に登り、ゾウの背中に置かれた小さな赤い椅子に腰掛ける。
長いまつげとつぶらな瞳が愛らしい。
心躍る体験に、子供のようにはしゃぐ私たち。
ゾウ使いは足と道具 (トンカチ?) でゾウを操るらしい。
言葉は悪いが、殴る、蹴る、の繰返し。
けれど、その表現はあながち間違いではないのかもしれない。

アユタヤのゾウ
ゾウの頭に触れようと手を伸ばす。
その時目に飛び込んできたのは、ゾウの頭ににじむ赤い傷。
きっと、ゾウ使いのトンカチで傷ついたのだろう。
タイでは、ゾウは神聖な動物としてあがめられている反面、
観光産業が重要な収入源であるがゆえに、人間相手に働かされることも多い。
この矛盾 (?) した扱いにちょっと疑問を感じつつも、
心から楽しんでしまっている自分が、なんだかちょっと後ろめたい。
ゾウは昔、食用としても猟の対象となっていたらしいが、
今ではもっぱら象牙目的の猟が後を絶たない。
タイでは、ゾウの保護プロジェクトが発達しているようだが、
それでも、心無い人間の仕業によって命を落とすゾウが多いのも事実。
ゾウは妊娠してから出産するまで、約 2年の月日がかかるという。
そんな長い時間をかけて生まれてきた命について考えさせられた体験だった。
歴代の国王たちが夏を過ごしたという「バーン・パイン宮殿」では、
こんな動物たちが私たちを迎えてくれた。
庭園で見られるゾウやウサギやコブラたち。
実はこれ、動物に見立てた植木であった。
ウサギは現在の国王の干支にちなんで作られたのだとか。
よく寝る国民を見る限り、細かな作業は苦手そうなのだが (笑)、
このような緑のオブジェ、建造物の装飾、名産品などを見ていると、
とても細やかな作りに感心させられることも多かった。
だからだろうか、街中にあったこんな言葉にも納得が出来る。
「完成度の高いイミテーションあります」!?
異文化コミュニケーション
旅では、現地の人はもちろん、世界各国から来た観光客とのコミュニケーションも楽しみの一つ。
ショップ店員、ホテルマン、駅員、現地の高校生…出会った人は数知れず。
水上マーケットのボート乗り場では、
おぼつかない足取りの私におじさんが笑顔で手を貸してくれた。
「コープクンカー (ありがとう)」
覚えたてのタイ語が初めて人に届いた瞬間。
また、「ワット・アルン」の急階段 (相当怖い!) をへっぴり腰で登っていれば、
知らない欧米人のおじさんに励まされて無事登頂。
満足げに下を見下ろせば、これまた知らないおじさんが親指を立てて「GOOD」のポーズ。
言葉はなくとも心は触れ合えると実感した瞬間。
あるツアーガイドのおじさんとはだいぶ交流を深めた。
20年前の札幌で、生まれて初めて雪を見たというおじさん。
抜群のセンスで、すてきな写真を撮ってくれてありがとう。
でも、一つだけ言わせてもらいたい。
ガイドなのに、「今、何時?」って私に聞かないで(笑)
出発前の大きな期待は喜びに、少しの不安は貴重な経験に、
そしてわずかばかりのお金はスーツケースに入りきらないくらいたくさんの思い出に変わった。
この旅で出会った人、見たもの、感じたもの全部。
きっと私にとって大きな財産となったはず。
次はどこの国へ出かけよう。
またたくさんの出会いと発見のある旅が出来ますように。
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